所長ブログ『シロとクロ』

回顧録1

2014/08/03

私は平成15年に48歳で公務員を自主退職して社会保険労務士を開業したが、平成元年(1989)に消費税が導入される数年前、公務員として広島へ出張した時のことである。

 列車が広島駅に到着した時小銭の持ち合わせがなかったが、何とかなるだろうと深く考えずバスに乗り目的地へ向かった。
(このブログとは特に関係ないが、鳥取では、今でもJR(昭和62年(1987)までは「国鉄」)のことを汽車と言う。23歳の娘の世代でもJR通勤のことを汽車通と言うそうで、嬉しく思う。)
 目的地が近づくにつれて、乗客の数が増え、いよいよ次の停留所で下車するために出口に向かうと、「両替はご遠慮ください」との貼り紙があった。
「申し訳ありませんが両替してもらえませんか・・」と運転手に尋ねた。
「両替はできません。配車場まで乗ってもらったら両替できます。」と、つれない答え。
120円ほどの額だったと記憶しているが、まもなくバスは目的地の停留所に到着し、千円札を払ってお釣りを受け取らず下車する覚悟をした時だった。
最前列に座っていたご婦人が二人のやり取りを聞いて、
「これ使ってください。」と回数券の一枚を渡してくれた。
すでにドアは開いており、後ろの客も降りる順番を待っている。
代わりに何か渡せる物はないか、等々瞬間的に思ったが、
「ありがとうございます。」
躊躇している間はなく、そう言ってご婦人からもらった回数券を運転手に渡してバスを降りた。
み返りを期待せずとっさに行動に移せることは、普段から心掛けていなければ、中々できることでない。
回数券をくれたご婦人に感服したが、その気持ちを伝える術はない。
あの出来事以来、私は回数券を渡してくれたご婦人の如く生きようと心に決めた。

平成元年当時の消費税率は3%で、最近5%から8%になった。
消費税率が8%になってから小銭がすぐ溜まる。
消費税が導入されてから出張していれば、広島での出来事はなかったかも知れない。
買い物をして釣り銭を受け取るたびに、広島でご婦人から受けた恩義を思い出す。