所長ブログ『シロとクロ』

定年再雇用後の同日得喪

2016/05/10

藤田特定社会保険労務士

退職後継続再雇用された場合、再雇用された月から、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に改定できる仕組みの対象者が、平成25年4月1日から「60歳以上の方」に変わりました。
○ 従来、「60歳から64歳までの厚生年金」を受け取る権利のある方が退職後継続再雇用される場合については、事業主との使用関係が一旦中断したものとみなし、被保険者資格喪失届及び取得届を同時にご提出いただき、再雇用された月から、再雇用後の給与に応じて標準報酬月額を決定していました。
○ 平成25年4月から、「60歳から64歳までの厚生年金」の支給開始年齢が引き上がることに合わせ、この取扱いの対象者を、「60歳から64歳までの厚生年金」を受け取る権利のある方だけではなく、60歳以降に退職後継続再雇用される方全てに拡大されることになりました。

退職後継続再雇用される場合に再雇用された月から標準報酬月額を改定できる範囲
○ これまでの対象の方
 退職し、継続再雇用された「60歳から64歳までの厚生年金」を受ける権利がある方
○ 新たに対象となる方
・退職し、継続再雇用された「60歳から64歳までの厚生年金」を受ける権利のない方 
・退職し、継続再雇用された65歳以上の方(※70歳以上の健康保険のみ加入の方を含む)
※ この同日得喪の取扱いは1回だけではなく、契約更新の度に行うことができます。

同日得喪とは
同日得喪とは、定年となった従業員(社会保険の被保険者)が雇用契約上、一時的に退職し、1日も空けることなく同じ事業所で再雇用される場合に、取得・喪失の手続きを同時に行う手続きをいいます。
退職と再雇用の日にちが同じ場合は「雇用関係が継続されている」とみなされるため、通常では被保険者の資格は「継続」扱いになります。ところが、定年後の再雇用の場合は報酬が減額されることも多いため、少しでも被保険者に有利になるよう「同日得喪」という方法が用いられています。

定年後の再雇用
同日得喪制度の導入背景とメリット
平成25年4月に「改正高年齢雇用安定法」が施行され、社員が65歳になるまでは希望者全員を雇用することが義務づけられました。
そのため、60歳で定年を迎えた従業員を一時的に退職扱いとし、同じ日に雇用形態を変えて(嘱託への変更等)再雇用するケースが増加しました 。再雇用後の報酬は退職前に比べると大幅に減額されることが多くなっています。
ところが、再雇用制度の性質上、報酬が減額されても社会保険料が従前のままという不合理な事態が発生する可能性があります。
通常は、社会保険料額や保険給付額は報酬額に比例しますが、実際に支払われる報酬は月ごとに変動があるので、保険料額や給付額の計算が非常に複雑になり手間がかかります。
そのために設けられているのが標準報酬制度です。計算の手間を省くため、報酬月額を等級表内の金額(標準報酬月額)に当てはめ、これを算定の基礎とします。
標準報酬月額を決定するタイミングは下記の四通りです。
1. 資格取得時決定(被保険者が資格を取得した時に決定)
2. 定時決定(毎年4~6月の報酬から標準報酬月額を見直す)
3. 随時改定(大幅に報酬が変動した場合の改定)
4. 育児休業等終了時改定(育児休業終了時の報酬から改定)
60歳で定年を迎え再雇用後の報酬が大幅に減額された場合は、上記3の随時改定にあてはまりますが、実際に改定された保険料が適用されるのは4ヶ月後になり下記のような問題が発生します。
・再雇用により報酬が減額となる一方、保険料がしばらくのあいだ高額になる
・働きながら年金受給をする従業員の場合、調整される年金額が多くなる
このような問題の解決のため「同日得喪」という方法が用いられるようになりました。
1. 定年退職の時点で雇用関係が終了し、退職したものとして社会保険の喪失手続きを行う
2. 退職日当日に再雇用したものとして、新しい報酬による社会保険の取得手続きを行う
この方法なら、退職と再雇用が同日ということで雇用関係の中断もなく、継続状態を保ったまま報酬に見合った等級で計算された社会保険料が適用されます。

同日得喪手続きに必要な書類
同日得喪の手続きに必要となる書類は以下のものです。
・社会保険の資格喪失届
・健康保険被保険者証(被扶養者分も回収)
・社会保険の資格取得届(被扶養者があれば改めて手続を行います。)
・就業規則の定年部分の写し・辞令などの写し(退職日が確認可能な書類)・再雇用の際の雇用 
契約書の写し
※同日得喪を行うと、新しい健康保険番号での健康保険証が交付されます。

対象範囲の拡大
これまでは、同日得喪の対象者は60代前半の老齢厚生年金が受給できる人に限られていましたが、度重なる法改正により下記のように対象範囲が拡大されました。
1. 老齢厚生年金の受給資格のない60代前半の人でも可
2. 定年以外の理由で再雇用された場合でも可
3. 1人1回きりではなく、再契約がされるたびに申請が可
4. 65歳以上の人でも可

報酬増額時の対応
「同日得喪」制度を活用する理由の1つに、社会保険料を適切な金額にするということがありますので再雇用で報酬が増額した場合は、通常どおり随時改定されるまで待った方が有利です。
傷病手当金額も変更
再雇用により標準報酬月額が変更となった場合、健康保険の傷病手当額も変更されます。傷病手当金額の計算は標準報酬月額をもとに行われるため、標準報酬月額が減少した場合は受給できる傷病手当金も減少します。